小説
第23回鮎川哲也賞受賞作の市川哲也『名探偵の証明』と、その続編である『密室館殺人事件』、 『蜜柑花子の栄光』。 『名探偵の証明』より 第1作およびシリーズ名にある通り、ミステリーにおける名探偵の役割・意義に焦点を当てている。 個人の意見としては、…
去年購入してからそれきりだった『竜歌の巫女と二度目の誓い』*1と、『その商人の弟子、剣につき』*2を読破した。 両者とも、第12回GA文庫大賞の銀賞で、2020年12月に発売された*3。とりあえず一言で感想を言うなら、「概ね高水準のまま着地した『竜歌の巫女…
2021年2月に刊行された阿津川辰海『蒼海館の殺人』(講談社、2021年)*1 前作『紅蓮館の殺人』後の、葛城・田所ペアの話が、前作以上のボリュームを持って登場することとなった。 その上で、本作に対する評価だが……、「本作単体としては、優れて技巧的に組み立…
今回は阿津川辰海『紅蓮館の殺人』(講談社、2019年)*1を取り上げる。 2021年2月に続編の『蒼海館の殺人』が刊行され、そちらを読んだので、これを機に前作にあたる『紅蓮館』についても記事を書くことにした(『蒼海館』についてはまた別記事で)。 阿津川辰海…
滝川廉治『Monument あるいは自分自身の怪物』(集英社、ダッシュエックス文庫、2015年) 滝川廉治『Monument あるいは自分自身の怪物』を読んだ*1。 この本を読もうと思ったきっかけは、たしかあるライトノベルの感想をAmazonレビューで見た時、評者が名前を…
あらかじめ言っておけば、この文章は、吉村達也という作家をダシにしているようなものである。しかし、氏の死から相当月日が経った中、人生の決して少なくない時間を氏の作品を読むことに費やした人間が書くことには、何らかの意味はあるかもしれない。少な…
……むろん、小説家には、同時代の歴史をそのまま書かなければならぬ義務はない。だがその時代の大きな社会的事件にまったく目をつぶったままの小説家というのも、たいていは愚かものか正真正銘の白痴である。 「鯨の腹の中で」『オーウェル評論集』149頁
わたしはもっぱら彼の「本質的な思想」ばかりを論じて、文学的資質はほとんど無視してきた。だが作家というもの、とりわけ小説家は、当人が認めようと認めまいと、ある「本質的な思想」を持っているもので、その影響は作品の内部まで及んでいるのである。 「…
自分用の備忘録も兼ねてブログを開設!……したはいいもののほぼ二ヶ月放置した挙げ句、年を越えてしまった。こうなると、さて最初に何を書くべきか逡巡してしまう。そこで思い切って、2020年1月現在に至るまでの自分にとって印象深い作品をいくつか選び、その…